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nitro_idiot’s diary

すべてフィクションということになっています。

愚直

会社の飲み会の席で「今のチームはどうですか」と聞いた彼女とはつい数週間前まで同じチームで仕事をした仲だった。「今のチームは……」思うことをかき集めつつ、まずは、と口に出したのは上司のことだった。「彼は、すごいと思います。……本当に」するとみんな笑った。きっと何を口にしても笑う予定だったのだ。つられて僕も苦しそうに笑った。

何がすごいの。「えっと……」うまく説明しようと思ったのだがうまく話せない。そんなうちにタイミング悪くも遅れて本人が来てしまった。

「今ちょうど話をしていたところですよ」と彼女はあっさり言った。「にとり君がすごいって言ってましたよ。何がすごいのかは言わなかったけど」たとえ本人がいない場であっても悪口は言えないものだな、と思った。

とはいえ、元来上手い嘘などつけない性格なので、すごいと言ったのも嘘ではなかった。すごいと思っていないのであればきっと同じ口調で、彼は大したことないと言っていたはずだ。そしてみんな同じ調子で笑っただろう。

彼は空いていた通路側の席に座った。ビールでいいですか。はい。どうぞ。ありがとうございます。では、お疲れ様でした――。続いてビールの混ざった言葉が交わされ、そのまま僕は同じ席で、あまり興味のない話をそれほど興味もなさそうに聞いた。