nitro_idiot’s diary

すべてフィクションということになっています。

世界片

去年の四月にマイクロ一眼を買った。携帯のカメラで風景を撮っていた僕にとっては良すぎるカメラだ。それまでほとんど趣味と言えるもののなかった僕にとって初めての趣味だった。

カメラを買うまでは、そんなにたくさん撮ることがあるだろうかと考えあぐねている時期もあったが、実際買ってみると週末に出かけた際などに持ち歩いて、気の向くままに撮って回る事が多い。

以前、関東の友人と外に出たときに新しいカメラの話になった。彼は僕の首にかかったカメラを示してピント? ぼかし? 補正? 確かそんな話をした。僕は、さあ、よく知らない、とだけ首をすくめて答えた。すると彼は呆れた顔をして言う。

「深町さん、もっとカメラのこと勉強したらどうですか」

そう言われてもなぁ……。何しろ僕は使いこなそうという気がないのだ。シャッターがついていて、押したらそれなりの質で撮れるという物体であればそれ以上に立ち入る気がない。うまく撮れないことも多い。気にしない。そういったものを眺めるのも悪くない。逆に偶然にもよく撮れたものはFacebookに貼り付けたりして楽しんでいる。

考えてみると、僕はカメラを向けてシャッターを押すという動作が好きでカメラを持ち歩いているのかもしれない。醜いものや退屈なものばかりのこの世界で、ただ美しいものだけを切り取っては集めている。