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nitro_idiot’s diary

すべてフィクションということになっています。

随筆

命を削って

「にとり君、ラーメンは食べられるの」と同僚が訊く。彼は僕が何でもは食べることはできないことを知っている。調子が良ければね、と僕は答えた。調子が良ければ食べられるの。まあ、調子が良くて、翌日休んでいいならね。それを聞いてみんなは笑った。そん…

礼節を知った話

母は、どちらかと言えば合理的なことを好む性格で、意識的に母から教わったことはどちらかというと合理的なことだった。そんな母の影響を受けた僕はやはり、合理的なものを好む傾向にある。行動は出来る限り合理的なものになるようにした。不合理なものは嫌…

愚直

会社の飲み会の席で「今のチームはどうですか」と聞いた彼女とはつい数週間前まで同じチームで仕事をした仲だった。「今のチームは……」思うことをかき集めつつ、まずは、と口に出したのは上司のことだった。「彼は、すごいと思います。……本当に」するとみん…

被災地を訪れて

去年三月十一日の東北地方太平洋沖地震があったとき、僕は六本木のオフィスで仕事をしていた。東京も震度五強で、建物が倒壊するほどではなかったけれど、その日は電車が一晩中動かず、会社の椅子で眠った。先日、その日に会社のテレビで見た大津波の町、宮…

世界片

去年の四月にマイクロ一眼を買った。携帯のカメラで風景を撮っていた僕にとっては良すぎるカメラだ。それまでほとんど趣味と言えるもののなかった僕にとって初めての趣味だった。カメラを買うまでは、そんなにたくさん撮ることがあるだろうかと考えあぐねて…

僕とニトリと深町英太郎

去年、僕は歳をとるのをやめた。正確に言うなら誕生日を捨てた。自分の誕生日が嫌いだったからだ。誕生日が来る数カ月前にウェブ上にあるさまざまなサイトから、自分の誕生日の情報を神経質に消して回った。個人ブログ、Twitter、Google、Facebook、GitHub、…

今宵の月のように

久しぶりに長く夜空を見た。皆既月食の夜だった。いくつか寄り道をして鴨川に着いたのは、食が始まる一時間前だった。途中で買ったドーナツを食べながら、河原で灰色の雲に覆われた空を眺めていた。「月、見えないね」河原の空気は冷たかった。言葉と同時に…

贅沢

京都で家を探して不動産屋を訪ねていたときのこと。今の住まいを聞かれて川崎、と答えると、親切に京都の地理や風土について教えてくれた。ちょうど八月だった。暑いですね、と言う。関東よりも暑いですか、と問い返す。ええ。京都の夏は毎年こんな感じです…

冬の沖縄

先週末に初めて沖縄に行った。二泊三日の小旅行だった。写真を撮り過ぎて整理が間に合ってないので載せられないけど、取り急ぎ日記を書いておく。今まで「南国」には二度行ったことがある。一度は高校の修学旅行で行ったオーストラリアのケアンズ。世界遺産…

深町家

「何かいろいろ付いてますね」と、彼はテーブルの上の僕の携帯を指さして言った。僕の携帯には本体と同じ重さほどのキーホルダーやストラップがついている。彼は続けて、一つのキーホルダーを指して聞いた。「それは何ですか?」彼が示したキーホルダーはほ…