nitro_idiot’s diary

すべてフィクションということになっています。

『君の名は。』運命の出会い

※ちょっとネタバレがあります。大学の同級生五人で久しぶりに飲み会をした。八月にそのうちの一人の結婚式で顔を合わせたばかりだが、披露宴では主役とゆっくり話す余裕もなかったので日を改めて飲み直そうということになったのだ。まずは近況。それから結婚…

それぞれの社会

最近、大学生の頃に知り合った年下の女の子と再会した。彼女は当時は短大に通っていて自分の頭の悪さを卑下していたけれど、明るく利発でジョークのセンスも良かった。君は頭がいいね、と言うと、え、そんなこと言われたの初めて、と恥ずかしがりながらも少…

世の中の美しいもの

最近、ツイッターでじわじわと目にするようになったask.fmを僕も使ってみようと思って登録してみた。ask.fmは自分の周りから質問を募集して、それに回答するソーシャルなウェブサービスだ。思ったよりも真面目な質問が多く集まり、「今は何をして生計を立て…

個人で電子書籍を出版したときに必要だったこと

前回の記事で、電子書籍を作って出版したことを書きました。そのときに出版までにやったこととかを書いておきます。「自分も個人で電子書籍を出してみたい」という方は参考にどうぞ。あんまり縦書きに向いてない記事だけど、物書きの人も幾人か購読されてる…

このブログを電子書籍化して短篇集として出版しました

このブログに過去掲載した短篇小説を加筆・再編集して電子書籍化して、KindleストアとGoogle Playブックスで個人出版しました。 収録作品は「苦悩の告白」「京都の冬」「ホタル」「眠る女生徒」「欺瞞」「泥濘」の全六篇です。 なんでブログに一度載せたもの…

泥濘

それはある日の事だった。――朝、仕事に行く妻を見送ってから再びベッドに戻って考え事に耽る。去年の暮れに関東へ引越してからの習慣になっていた。今日は何をしようかと考えてみたが、その日は何もする気も起こってこなかった。それより前、自分はかなり根…

命を削って

「にとり君、ラーメンは食べられるの」と同僚が訊く。彼は僕が何でもは食べることはできないことを知っている。調子が良ければね、と僕は答えた。調子が良ければ食べられるの。まあ、調子が良くて、翌日休んでいいならね。それを聞いてみんなは笑った。そん…

うごメモはてなの内側から

最後のうごメモ専任エンジニアとして「うごメモへのメッセージ」を書きます。僕は二年前にはてなに入社してからうごメモに最後まで関わりました。二十三歳が二十五歳になった。 自分のうごメモとの関わり方 うごメモは歴史のあるサービスなので、関わった人…

礼節を知った話

母は、どちらかと言えば合理的なことを好む性格で、意識的に母から教わったことはどちらかというと合理的なことだった。そんな母の影響を受けた僕はやはり、合理的なものを好む傾向にある。行動は出来る限り合理的なものになるようにした。不合理なものは嫌…

苦悩の告白

「なかんずく君は発見することになるだろう。人間のなす様々な行為を目にして混乱し、怯え、あるいは吐き気さえもよおしたのは、君一人ではないんだということをね」 ―― J.D.サリンジャー「ライ麦畑でつかまえて」 ときどき思い出す言葉がある。それはときに…

欺瞞

毎朝、種を蒔いた盆栽に水を遣る。水遣りは上からジョウロでぱらりと撒くような優雅なものではなく、種が流れてしまわないよう水を張った皿に鉢ごと浸けて行う。水分が行き渡るまでには二十秒ほどかかる。僕は軒下でじっと土の表面を見つめていた。蒔いてひ…

眠る女生徒

病院で、眠りにつくときの気持ちは、面白い。夏の雑木林で蝉時雨の只中に一人ぽつりといて、私を探しているのかしら、遠くで知った誰かが私を探して叫んでるのに、どこかすぐに出て行っては面白くないような、変ないたずら心で、だけど懸命に隠れるのも変な…

愚直

会社の飲み会の席で「今のチームはどうですか」と聞いた彼女とはつい数週間前まで同じチームで仕事をした仲だった。「今のチームは……」思うことをかき集めつつ、まずは、と口に出したのは上司のことだった。「彼は、すごいと思います。……本当に」するとみん…

ホタル

夜の空気に触れながら河原を歩いていると、視界の上端で淡い光が走った。月の出ない夜であった。見上げてそのまま立ち尽くしていると、再び光の線が走った。ホタルである。よくよく水辺を見渡すと、他にも数個の点滅を見つけた。ホタルを見るのはとても久し…

被災地を訪れて

去年三月十一日の東北地方太平洋沖地震があったとき、僕は六本木のオフィスで仕事をしていた。東京も震度五強で、建物が倒壊するほどではなかったけれど、その日は電車が一晩中動かず、会社の椅子で眠った。先日、その日に会社のテレビで見た大津波の町、宮…

京都市動物園

世界片

去年の四月にマイクロ一眼を買った。携帯のカメラで風景を撮っていた僕にとっては良すぎるカメラだ。それまでほとんど趣味と言えるもののなかった僕にとって初めての趣味だった。カメラを買うまでは、そんなにたくさん撮ることがあるだろうかと考えあぐねて…

本屋に行っての帰り道、すぐに帰っては勿体無いと思い、あてもなく家とは反対の方角へ向かった。週末の買い物客の多い河原町から小道に入り、騒がしい木屋町通を抜けると鴨川がある。河原への階段を下りた。冷たい空気が周りを満たす。僕は冬がそれほど嫌い…

僕とニトリと深町英太郎

去年、僕は歳をとるのをやめた。正確に言うなら誕生日を捨てた。自分の誕生日が嫌いだったからだ。誕生日が来る数カ月前にウェブ上にあるさまざまなサイトから、自分の誕生日の情報を神経質に消して回った。個人ブログ、Twitter、Google、Facebook、GitHub、…

明かり

今宵の月のように

久しぶりに長く夜空を見た。皆既月食の夜だった。いくつか寄り道をして鴨川に着いたのは、食が始まる一時間前だった。途中で買ったドーナツを食べながら、河原で灰色の雲に覆われた空を眺めていた。「月、見えないね」河原の空気は冷たかった。言葉と同時に…

先端

とらやの羊羹を買いました。切って食べようと思いました。そういえばこの和菓子用のフォーク、「菓子楊枝」という名前だそうです。何かに似てると思いました。先端が似てます。ぷすっ。とてもどうでもいい話でした。羊羹はおいしかったです。

贅沢

京都で家を探して不動産屋を訪ねていたときのこと。今の住まいを聞かれて川崎、と答えると、親切に京都の地理や風土について教えてくれた。ちょうど八月だった。暑いですね、と言う。関東よりも暑いですか、と問い返す。ええ。京都の夏は毎年こんな感じです…

物書きのための非公式ブログテーマ

ブログテーマを褒められました。最初の頃は「縦書きにしたら面白そう」という程度で笑いながら作り始めたのですが、Chromiumで思ったより綺麗に表示されたため真面目に作り込んでみた次第です。はてなブログでは日本語を頑張ろうと思っていたのもあり、丁度…

冬の沖縄

先週末に初めて沖縄に行った。二泊三日の小旅行だった。写真を撮り過ぎて整理が間に合ってないので載せられないけど、取り急ぎ日記を書いておく。今まで「南国」には二度行ったことがある。一度は高校の修学旅行で行ったオーストラリアのケアンズ。世界遺産…

深町家

「何かいろいろ付いてますね」と、彼はテーブルの上の僕の携帯を指さして言った。僕の携帯には本体と同じ重さほどのキーホルダーやストラップがついている。彼は続けて、一つのキーホルダーを指して聞いた。「それは何ですか?」彼が示したキーホルダーはほ…

ブログとデザイン

僕はシンプルなデザインが好きです。その点、はてなブログのデフォルトのデザインは気に入っています。非常にシンプルで、押し付けがましいこともありません。なので今まで使ってきたのです。しかし、はてなブログも使う人が増えてきました。多くの人はデフ…

未来とハードウェア

先日、id:hitode909さんと自動テストについて話す機会があった。どうすればこの膨大なテストを保守したくなるか、という話だ。その中で、XFD (eXtreme Feedback Device) を試してみるのはどうだろうという話が出た。テストが失敗したときに目が光る人形ならA…

また死んだ

昔から病に好かれる。年に一度くらい入院してたこともあるし、薬が切れたあと病状が悪化して起き上がれなくなったこともある。一人暮らしならそのまま死んでたんじゃないかなってことも何回かあった。今もまた急遽お休みをいただいていて療養中だけど、幸い…

京都の月

「お義父さんに似てるよね」と彼女に言われる。短気で享楽主義な父に似ていると言われて喜べない僕は「似てない」とぶっきらぼうに言って渋い顔をする。すると笑って彼女は言うのだ。「そういう顔したとき、お義父さんに似てるよ」父は昔から、いつも大げさ…